1、酒類の販売って?
お酒の販売には、もともとは距離制限などがありました。すでにお酒を販売している
お店がある場合には、その店舗から一定の距離を離さないと、新たな店舗を開店する
ことが出来ませんでした。しかし、規制緩和の流れの中で、距離制限が撤廃されまし
た。これを一般に、「酒類販売の自由化」と言っています。
ですが、「自由化」「自由化」とは言いますが、完全にすべてが自由となったわけで
はありません。依然として、酒類の販売には免許が必要です。自動車の運転をする際
には、免許が必要ですよね。それと同じです。ですから、完全な自由化ということに
は、まだまだです。なお、自動車の運転の際に免許がないと無免許運転となってしま
うのと同じで、酒類の販売の場合にも、免許がないと無免許販売となって、懲役又は
罰金となってしまう可能性もありますので、気を付けて下さい。
2、緊急調整地域って何?
以前は酒類販売について店舗を設けようとした場合には、既存の店舗との間に距離制
限があったことは上記の通りです。現在においては、この距離制限はなくなりまし
た。
しかし、距離制限がなくなると今まで経営してきた既存の店舗にしてみれば、大型店
の進出により急に価格競争が発生し、経営状態の芳しくない地域においては経営を圧
迫しかねません。
そこで、一定の基準を設け、経営状態が不振な地域を緊急調整区域として定め、この
地域内においては、新たな店舗の出店及び移転は出来ないこととして、既存の店舗の
保護を図っているのです。この緊急調整地域については、当初は平成17年8月31
日までの予定でしたが、その期間が延長され、平成18年8月31日までとなりまし
た。
3、どういう場合に免許が必要なの?
お酒の販売には、それぞれの販売場ごとに、その所在地の所轄税務署長の免許を受け
なければなりません。
ここでいうお酒とは、次のものを言います(酒税法2条)。
清酒、合成清酒、しょうちゅう、みりん、ビール、果実酒類、ウィスキー類、
スピリッツ類、リキュール類、雑酒
これらのものが「お酒」であり、酒税法上の「酒類」にあたります。販売場におい
て、酒類を販売するために必要な、代表的な免許が「一般酒類小売業免許」です。こ
の免許を取得するためには、酒税法10条各号に掲げられている要件を満たしている
ことが必要です。
4、免許の要件
酒類販売免許をするための要件としては、人的要件、場所的要件、経営基礎要件、需
給調整要件というものがあります。
それぞれにつき、代表的な例を挙げてみます。
人的要件というのは、簡単に言えば、これからお酒の販売を行おうとする人が、酒類
の販売に適した人かどうかを確認するということです。
例えば、申請者が酒類の製造免許もしくは酒類の販売業免許又はアルコール事業法の
許可の取消処分を受けたことがないことが必要となってきます。
場所的要件というのは、簡単に言えば、実際に販売する場所についてのことです。こ
の場所が、販売に適した所でなければならないわけです。
具体的に挙げられている例としては、狭あいな店舗内の一部を賃借等して陳列棚を販
売場とする場合があり、この場合には要件を満たすものとは認められません。
経営基礎要件とは、免許の申請者が、その経営の基礎が薄弱であると認められる場合
に該当しないことが必要ということです。簡単に言えば、経営の基礎がしっかりして
いることが必要となるわけです。
例えば、申請前1年以内に銀行取引停止処分を受けている場合は、要件を満たさない
ことになります。この場合には、「経営の基礎が薄弱」ということになるのです。他
にも、国税や地方税を滞納している場合は、要件を満たしません。
なお、この経営基礎要件については、次の点についても気をつける必要があります。
それは、免許の申請者が経験その他から判断し、適正に酒類の小売業を経営するに十
分な知識及び能力を有すると認められる者又はこれらの者が主体となって組織する法
人であること、というものです。
この要件については、例えば次のような場合には、原則として満たすものとされてい
ます。
「免許を受けている酒類の製造業若しくは販売業(薬用酒だけの販売業を除く)の業
務に引き続き3年以上直接従事した者、調味食品等の販売業を3年以上継続して営業
している者又はこれらの業務に従事した期間が相互に通算して3年以上である者」
このように、とりあえず起業したい、さしあたっては酒類販売をしたい、と思って
も、なかなか難しいものなのです。
需給調整要件とは、免許の申請者が設立の趣旨からみて、販売先が原則としてその構
成員に特定されている法人又は団体でないこと、免許の申請者が酒場、旅館、料理店
等酒類を取り扱う接客業者でないことをいいます。
5、書類の提出など
そして、このような要件を満たすかどうかを審査するために、下記の書類を提出する
ことになります。
申請先は、販売場の所在地を管轄する税務署になります。
必要書類
- 酒類販売業免許申請書
申請書別添図面として、「販売場の所在地」と「販売場の周辺の見取図」が必要です。
- 免許申請書チェック表
- 一般酒類小売業免許の免許要件申告書
- 法人の場合 登記事項証明書及び定款
個人の場合 住民票抄本
- 免許申請等一覧表
- 申請者の履歴書(法人の場合には、役員全員)
- 販売設備状況書
付属書類として、「販売設備等の状況(写真)」、「建物等の配置図」と「販売設備状況書付属書類」が必要です。
- 土地及び建物の登記事項証明書
- 事業もくろみ書
- 最近3事業年度の財務諸表
- 所有資金の明細書及びその調達方法
- 地方税の納税証明書
これらの書類を揃え、税務署に、申請書に必要書類を添付して提出しますと、審査に
およそ2ヶ月程度かかります。
そして審査が通過し、免許を受ける場合、登録免許税の納付について、税務署から
「酒類販売業免許に伴う登録免許税の納付通知書」がきますので、納付する必要があ
ります。金額は1販売場につき金3万円です。
登録免許税の納付が確認された場合、「酒類販売業免許通知書」が交付され、一般酒
類小売業免許が付与されます。
酒類販売の免許については、提出書類の分量もかなりのものです。
まずは、当事務所にご相談下さい。